収録アルバムに先行する1981年6月リリースとなった直球ロックテューン。オリコン最高位49位、4.6万枚でサザンとしては売れ行きワースト1を誇る12thシングルです。映画"モーニング・ムーンは粗雑に"主題歌にもなったブラックミュージックのグルーヴが冴える曲ですが、実はイントロからしてUSポップ&ガレージロックバンド・PAUL REVERE & THE RAIDERSが1966年初めに放った大ヒット"Kicks"まんまですね。ビッグスターとは…DUSTIN HOFFMAN、ERIC CLAPTON、YOKO ONOの次に登場する固有名詞から推測できます。サブタイトルは"Video Killed the Radio Star"を連想させたり本当ごっちゃ混ぜ。しかしこれがファンの間では桑田流サイケデリックロックの傑作であり、初期サザンの完成されたスタイルとの高評価を得ているのもまた事実。掘り下げるとかなり深いですよ。
先行シングル"Big Star Blues (ビッグスターの悲劇)"のB面曲かつ"モーニング・ムーンは粗雑に"の挿入歌。地味ながら沁みるメロディは個人的に北欧ポップス・BJORN & BENNYの"She's My Kind of Girl"を連想しました。でもってアレンジはイタリア辺りのラテン風と例によってミクスチャー。"思いがけぬまま醒めてゆくだけのムード"の結末は如何に?
認知症と多系統萎縮症の悪化でツアーから身を引くというニュースを目にしたと思ったら、それから殆ど間を置かずに飛び込んできた「急死」の報には驚かざるを得なかったジャック・ラッセル(Vo)。浮き沈みの激しいミュージシャン稼業を送り、バンド名の使用権を巡ってかつての盟友マーク・ケンドールと訴訟にまで発展した時期もあったという彼氏が、JACK RUSSEL’S GREAT WHITE名義で'17年に発表したアルバムがこちら。 GREAT WHITEの看板掲げて制作されているので、本作から流れてくるのは当然過去作の延長線上にある、ブルージーなエッセンスを盛り込んだHRサウンド。マークのGの不在ゆえか、はたまた歌を中心に据え、全体的に落ち着いたトーンが支配的なこじんまりとした作風ゆえか、GREAT WHITEの新作というよりは「ジャック・ラッセルの3枚目のソロ・アルバム」を聴いているような気分になる仕上がりではあるものの、彼のソロ作…特に2nd『FOR YOU』(’04年)を愛聴している身には落胆に当たらず。むしろ望むところですよ。 流石に“ALWAYS”級の名曲は見当たらないまでも、独特のハスキー・ボイスは年を経ても全く衰えることなく健在。哀愁に満ちたOPナンバー①、後期GREAT WHITEに通じる②④、アーシーなバラード⑥といった佳曲は流石の歌いっぷりでエモーショナルに酔わせてくれますし、妖しげな雰囲気漂わすアルバム表題曲⑦、テクニカルなGの存在が映えるアップテンポのHRナンバー⑨のような新味を感じさせる楽曲も魅力的です。 JACK RUSSEL’S GREAT WHITEのポテンシャルが十二分に伝わってくる力作だっただけに、これが最初で最後のフル・アルバムになってしまったことが残念でなりませんね。